50代は選択の宝庫であり悩みのジャングル(定年退職・早期退職・リストラ・転職・起業・嘱託社員・アルバイト)

先日のブログでは50代に発生している悩みの変質や環境の変化というものを確認してきました。60歳・65歳という定年を迎える年齢を前にして、何故これほどまでに悩む人が多いのでしょうか? その理由の一つに定年後の人生設計をするという、自分の人生にとって、とても大きな「選択」を控えている年代、という事が関係していると思うのです。では具体的に一つ一つ見ていきましょう。

 

■定年退職

多くのビジネスパーソンは、定年退職を迎える年齢が近づいてくることに、安堵感、不安感、希望、悲観、さまざまな心境が入り混じった複雑な心境を抱いているのではないでしょうか?

もちろん、ご自身がオーナーであるビジネスをお持ちであったり、定年後に悠々自適な生活をおくれるだけの充分な蓄えがある方は、何の心配もないと思います。ただ私のように普通のビジネスパーソンにとっては定年後の生活を年金だけに頼るのは難しいのではないか?と疑問を感じていたりして、定年という人生の節目を迎えるにあたり複雑な心境を持っていると思います。

もし60歳で定年を迎えたとした場合、悠々自適な余生を送る期間は何年間あるのでしょうか?仮に90歳まで生きるとしたら30年間ですし、100歳まで生きた場合は40年間になります。

このブログを読んでいるあなたが50代前半であれば、仕事を始めてから30年間くらい経過していると思います。30年間を振り返って考えてみると、けっこうな時間だったと思います。それと同じだけ、またはそれ以上の期間が、まだまだ残っているということなのです。ちょっと想像がつかないというのが実感ではないでしょうか。

 

■早期退職

主に大企業にお勤めの方が中心になるとは思いますが「早期退職制度」というものがあります。よくニュースや雑誌でも話題になっていますので耳にする方も多いと思います。

「早期退職制度」とは何でしょうか?簡単にいうと定年を迎える年齢より大分前に、早く退職してもらえれば、その時点に支給される「退職金」を少し割り増ししてあげますので、とても「お得」ですよ。という趣旨で企業が作った制度だと思います。

割り増し金額は、数百万円~数千万円にまで多岐にわたりますが結構な割り増し金ですので確かに「お得」のように感じます。でも本当に「お得」であれば、営利を目的とする民間企業が社員に勧めることがあるのでしょうか?そう考えるとちょっと微妙な感じがしますよね。

やはり企業としては、多少の割り増し金を支払ってでも、50代の社員に退職してもらった方が「お得」な事があるので、そのような制度を作り「早期退職」を促しているのだと思います。もちろん「早期退職制度」を利用するということは、「金銭面」だけではなく、勤めている時とは比較にならないほどの時間的な余裕が生まれますので、それを踏まえて戦略的に選択する話になるのだと思います。

 

■リストラ

これは聞くのも辛い言葉ですよね。リストラの意味をここで確認してみましょう。

・Restructuring(リストラクチャリング)= 事業構造を再構築すること

主に人員の削減や事業の縮小といった固定費や事業規模を縮小する意味で用いられています。本来、リストラは人員の削減だけでなく事業の再構築を指す言葉ですが、我々が持っているイメージは人員整理が強いと思います。

営利を目的とする民間企業で、目論んでいたような収益が見込まれない時、固定費である人件費を削減するというのは経営サイドの合理的判断として十分に理解できるものです。そして世界中の経営者の方が行っていることだと思います。

ただそうした概念として理解する事とは別に、もし自分がリストラの対象になった時の事を考えると、はたして「これは合理的な判断ですよね」とスッキリと理解できるものでしょうか。やはり今まで自分が果たしてきた会社への貢献などが心に浮かんできてしまい、多くの方が悲しみや怒りや無力感といった心情を抱えてしまうのではないでしょうか?

 

■転職

50代となっても心機一転、転職される方もいると思います。ただ転職というのは、どうしても運というかタイミングというものが存在すると思います。ましてや50代ともなると、以前の職場でそれなりの報酬を得ていて、また役職や立場があったという方が多いと思います。さらに大企業にお勤めの方の場合には、福利厚生や待遇といった給与明細に表れないメリットを享受されていた方も多いと思います。

ご縁があって転職した職場に「自分のやりたい事」であったり「自分の能力を活かせる場所」があれば、例え待遇面での変化があったとしても、それを補って余りある程の「やりがい」が得られるのではないでしょうか。50代になった今は転職の経験はありませんが、私も同じような経験をしてきました。

一方で50代で転職した結果、以前の会社の方が結果的に良かったと後悔しているという声を聞くこともあります。簡単に言うと「もう少し我慢すれば良かった」というものです。おそらくですが「今の方がよっぽど辛い」ということでしょうか。これは辛い話だなぁ~と感じます。会社というのは入社して働いてみないと、その会社の実態が分からないことが多いですし、会社を辞めてから改めて考えると「以前の会社は良かった」と思う事も決して少なくないのだと思います。

 

■起業

50代になり起業を準備する方もいると思います。もちろん起業は何歳になっても難しいものですので、50代で起業するのも決して簡単ではないと思います。

ただ50代ともなると経験や知識や人脈という、若いころには持っていなかった強味(武器)が増えていると思います。それを起業に活かすというのはとても有益なアプローチでありチャレンジだと思います。

一方で50代は体力やモチベーションといった活力が不足してくる年代でもありますので、起業に一番必要とされている情熱やエネルギーが不足しているという問題を抱えやすい年代だと思います。

実は「起業して成功する年代は50代が一番多い」という話を聞いたことがありますが本当なのでしょうか?これについては別の章で検証してみたいと思います。

 

■嘱託社員

よく聞く言葉ですよね。簡単にいうと60歳になり定年を迎えると、一度正社員を辞めてから嘱託社員として雇用されるということです。年収が半分になるとか三分の一になるとかという給与の話に興味が向きがちですが、実際は以前は部下だった人間から、いろいろと指示をされて仕事をする事が苦痛だという声や、勝手知ったる職場で大きな責任を伴わずに仕事を続けられるのであれば、むしろ好都合といった、両極端なご意見を聞くことが多いです。

これも人生の選択だと思います。仮に給与が三分の一になったとしても、転職して更に給与が下がる場合もある訳ですから、一概に「魅力が無い選択」とまでは言い切れないのではないでしょうか。個人的には割り切って働くという方には、ぜんぜん「あり」の選択だと思います。

 

■アルバイト

当然のことですが、アルバイトという選択肢もあると思います。ただ時給で働くアルバイトの場合、多くの場合は収入面での好待遇が期待ができないです。収入ではなく、働く環境であるとか、働く意義であるとか、収入以外のメリットを感じて選択するのであれば、選択肢になり得ると思います。

 

 

この章では定年を迎えた後の選択肢を、いろいろと見てきました。やはり50代という年代は様々な選択があるので悩ましい限りです。30年以上続く今後の生活のこともあるので、どうしても損得で考えてしまうというのも現実です。

ただ、ここで一つ重要な事をお伝えしなければなりません。今まで挙げてきた選択肢や、それらについての考察は、あくまで雇用される側の視点だという事です。当たり前の話ですが、雇用してもらうには、雇用してくれる会社や人が必要になります。

今度は雇用する側、つまり経営者からみた50代の人材について考えてみたいと思います。むしろ経営者の視点を知ることが50代のビジネスパーソンにとって、とても重要な事だからです。